2016/01/11

2015年VOCALOID10選

既に年も開けたけれど、どうせ私自身が後々読み返すことになるので、きちんとまとめておく。
今年も私自身が好きな曲、印象に残った曲をチョイスした。
以下、公開日時順に紹介する。

1
regulus / "Schwarzer Regen"
1/5



DubSteloidタグが付いてるから、ジャンルはたぶんダブステップ。

今年上半期で最もよく聴いたボカロ曲は、恐らくこれだと思う。昨年まで知らなかったPなので、なおのこと印象強かった。

2012年の10選で、この曲と同じダブステップの曲「てんしょう しょうてんしょう」を選んだ時も、同じようなことを書いたんだけど、この曲も緩急の変化が超気持ちいい。
Bメロの低めの音域から一気に跳ね上がるサビの入り。サビ前半でのひずみエネルギーが後半でそのまま運動エネルギーへと変わる、弾性体のような音楽。

サウンドはダンスミュージックらしく結構音圧があるんだけど、必要十分な音しか鳴ってないから上品に聞こえる。完成度抜群というか、プロ顔負けって感じね。


2
lumo / "パーティクルパーティ"
1/21



ジャンルわからんな……KARENTの紹介ではテクノポップって書いてあった。
lumoさんというと2012年の「ネコンダクター」が印象的で、10選候補にも挙げてた記憶がある。当時は枠の関係で結局選べなかったんだけど、今年は文句なしの選出。

一番の魅力は、何といってもサビの「Party Time! Dancing Night!」でしょう。これが中毒性抜群で、気が付いたら口ずさんでたことが何度もあった。
チップチューン風味で複雑なリズムを多用する作風は、さすがのlumoさんサウンド。この雰囲気は聴いただけですぐlumoさんってわかる独特のものよね。


3
40㍍P / "Snow Fairy Story"
1/31





40さんらしいド直球のポップ。
メジャー曲推しの人からもマイナー曲推しの人からも、「えっ、その曲選ぶの?」って言われそう。その上1月だけで3曲目。いいじゃん、どう選ぼうと私の勝手でしょう?

40さんはここ数年なかなかぴんと来ないことが多かったんだけれど、この曲は第一印象からすこぶる良かった。嫌味でなく、ダサくもなく、絶妙なところに落としてきたと思う。

サウンドも構成も、すごくスタンダード。いつもの40さんって感じ。ただ、その「いつもの40さん」の領域内に、私の琴線に触れるかどうかのより狭い領域があるらしく、この曲はそこをぴたりと撃ち抜いてきたのよね。
特に一つ魅力を挙げるなら、サビ3小節目のコードが素敵だわ。


4
和泉蛍 / "永遠なんて知らないよ"
2/28



ポップなロック? ロックなポップ?

滑舌はいまいちだし、サウンドも曇り気味で、決して完成度の高い曲じゃないんだけど、それを覆すほどのメロディが最大の魅力。ちょっとハーモニーが強引な分、それをねじ伏せていくメロディの力強さに耳を奪われる。
こういう手作り感の残る曲はボカロならではだよねえ……と言いたいところなんだけど、この曲UTAUなのよね。ちょっと前までボカロの魅力だと思っていた要素が、UTAUに移った気がする2015年。

それはともかく、和泉蛍さんは今年屈指のマイヒットで、この曲の他にも「吸血っく†ヴぁんぱいあ!」とか「キョンシー㊥ぱんでみっく!」とか、かなり期待して聴いてたPだったり。ぼかうたらん同時ランクインなんかもされてたし、来年はますます活躍していただきたいわ。


5
DATEKEN / "東京ルミネッセンス"
4/12



ブギウギ。ジャンル名だけでインパクトあるなあ。
なんかDATEKENさんは毎年選出してる気が……と思ったけど、実は2010年の「時の侭に」以来だった。意外!

ブギウギってジャンルが流行ってたのは、1950年代らしい。この曲も、この10選を通して聴くよりは、「リンゴの唄」とか「東京キッド」とかの流れで聴く方が自然かも。
民族調からジャズ、電子音楽までこなしちゃうDATEKENさんだけれど、こんなのまでできちゃうのねえ。すごいわ。

サウンド面で非常に印象的なのは、SP盤を再現したノイズとLo-Fiさ。ノイズを除いたバージョンもpiaproに上がっているけれど、ぜひ1度はノイズ有りで聴いてほしい。ブギ60年の歴史へのリスペクトを感じるんだよねえ。
サウンドだけじゃなくて、歌詞も戦後占領期の雰囲気なのよね。「センチな事は忘れて陽気に謡おう」なんてのが、いかにもあの時代っぽい。


6
弾人 / "piano"
7/29



ジャンルはジャズかな。この10選では2曲目になるUTAU曲。
選ぶにあたってこれと「forte」のどちらにするか迷ったのだけれど、こっちの方がより緩急の幅で優っていると感じたので。「forte」のビートの心地よさも捨てがたいのだけれどね。

ボーカルとピアノ1台で奏でられる音楽は、時に切なく、時に力強く流れていく。音楽の盛り上がりのレンジは編成に依らないということがよくわかる。
調教面もすごい。細かく震えるような歌声と口元の実体感が素晴らしい。この情報量の高さ、人間っぽさは、今のVOCALOIDではちょっと太刀打ちできないレベル。

しかし、弾人さんはUTAUシーンでは有名だけれど、ボカロ専門で聴いてる人への知名度はどうなのかねー。Watoさんあたりを好きなら、この曲はかなりおすすめ。


7
out of survice / "ピグマリオン"
8/21



ロック。

これはもう、調教の良さを差し置いて何をか語らんと。使われているのはCeVIOのONEなんだけど、いやはやこの神調教には本当に度肝を抜かれた。
今の3大合成音声(VOCALOID、UTAU、CeVIO)の中で、最も人間に近い調教と言っていいでしょう。ぼうっと聴いていて「あれ、この曲って、何て歌い手さんが歌ってるんだっけ?」と思ったことが何回もあったくらい、今までの「人間みたいな調教」とは一線を画すレベルにある。
アウトさんの他のVOCALOID曲でそんなことは思ったことがないから、これはアウトさんの調教技術だけではなく、ONEの実力の高さもあるはず。

初めてCeVIOを聴いたとき、「VOCALOIDに匹敵する性能を引っ提げて、彗星の如く現れた第3陣営」みたいな認識を持ったのだけれど、これはもうVOCALOIDを追い抜いていると感じてしまうねえ。


8
regulus / "Weißer Schnee"
8/31



これもDubsteliod付いてるからダブステップなのかな。

ははは、同じ人を2回選んではいけないと誰が決めたのだ! 
というわけで、まさかのregulusさん2曲目。並みいる名曲を押しのけて2曲選んでしまった程度には、私にとって今年を代表するPなのです。

先の「Schwarzer Regen」の魅力がブレーキ感だとすると、こちらは飛翔感といったところ。
冷たい空を切り裂いて飛んでいるような感覚がものすごく快い。
そして特徴的な「パ パ」が楽曲全体をぐっと締まったものにしているのよね。もしこれが無かったら、ただ何となく完成度の高い曲になっていたんじゃないかな。


9
りねず / "曇り空のエール"
10/1



ピアノが印象的なポップ。

これはすごいぞ。聴いた瞬間、「とんでもない大名曲に出会ってしまった」とドキドキした。
心を鷲掴みにされるような名フレーズを次から次へと畳み掛けられて、息をつく暇さえなく感動し続けてしまう。

メロディが伸びやかに翔け上がっていったと思ったら、次の瞬間には風をはらんで滑り降りてきて、右へ左へ自由自在に飛び回る。
ようやく間奏だと思ったら、今度は躍動するピアノに耳を奪われる。
そうこうしているうちにラストサビが来て、大感動のうちにいつの間にか聴き終えてしまう。
本当に、最初から最後まで休む暇がないんだ。

そして爽やかで透明感のあるラピスの歌声も素晴らしいんだよねえ。ぼかりすを使ってるんだけど、それがまた、むやみに人間くさくなくて非常に好感の持てる調声で素敵。


10
シャレオツP / "ハゲとともに生きる。-bald up jazz funk mix-"
11/26




ジャズファンク。って投コメに書いてある。

これはずるいよー。めちゃくちゃカッコいいのに「ハゲ」連呼するんだもん。
カッコつけた気分で聴こうと思ったら、よく聴くと「太陽のように輝きたいのに…」とか言ってるんだもん。笑うわ。

繰り返して言うけれど、曲そのものはめちゃくちゃカッコいい。ファンク系好きならノリノリになれること請け合い。
それから、かなりの良調教でもある。技巧的な調教で、アクセントの付け方が外国語っぽくてクール。ボーカルはルカV4Xで、こういう曲調には鉄板のボカロよね。


特別枠
よさこい男爵 / "CRYPTOLOGY"
2014/12/30



テクノポップ。

いやほら、年末の曲って10選入れにくくてかわいそうじゃん?
この曲はあと2日投稿が遅かったら、1も2もなく10選入りだったからねー。
えのやっくさんの「共有結合」(2010/12/27投稿)を2011年の10選に入れられなかったことを今でも後悔してるので、今度はちゃんと特別枠を設けた。


以下あとがき。

2016年1月10日時点での再生数平均値40896、中央値が16089(CRYPTOROGY抜き)。最大値はSnow Fairy Storyの204797、最小値は曇り空のエールの2791。
昨年と比較すると、最小値以外は低下。特に平均値は6割減で、この1年のボカロシーン全体の落ち込みを考慮しても、昨年よりマイナー寄りの選曲と言える。

今年は昨年以上にボカロ熱が低くって、10曲も選べるんかいなと恐々としていたんだけれど、選び始めたら予想外に粒ぞろいで驚いた。
最終選考で落とした曲はどれも選抜組と甲乙つけがたい名曲で、「これ落としちゃうの!?」って心の声が聞こえたほど。
regulusさんから2曲選んだのも、良い曲が思いつかなかったからではなくて、数ある良作の中でそれでも選ぶ価値があると思ったから。
それにしても、「良い曲が減っている」んじゃなくて「良い曲が伸びない」というのが今のボカロシーンなんだなと、改めて痛感したよ。

曲チェックの方法については、昨年とほとんど変えてない。ぼかうたらん+みてれぅちゃんねるでの新曲チェック。
このチェック方法については、非常によく機能してくれていると自負している。ボカロ熱低くても続けられているのだからね。
今年もきっと変えずに行くでしょう。